青森県上北郡七戸町字町7-2
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笑いの力

2023/01/04
 【コロナ禍を理由に開催を見送る学校も多い中、東京都八王子市にある私立マキャベリ小学校では、「新しい運動会」としてプログラムを完成させた。花形競技でもあるリレー種目では、長さ2メートルのロングバトンを使用することで、適度な間隔を確保したままバトンパスが可能に。体育課の西条教諭は「不可能に思えることでも、小さな工夫を積み重ねれば実現できるということ。足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」と話す。(一部省略)】これは『虚構新聞』という、実際にありそうで実は存在しないネタをニュースとして掲載しているネットサイトの内容です。もしかしたらありそうだと感じてしまう雰囲気の文章はとても面白く、制作者の文才に脱帽します。また、「実は存在しない」を徹底しており、制作者自身の調査不足で現実にあったこと、もしくは記事掲載後に現実化した内容には、「誤報」と称して謝罪記事が掲載されます。実は上記記事も、その後現実化し謝罪文が掲載されました。虚構の記事であるにも関わらず一部ネットユーザーは事実と勘違いし、虚構新聞を批判する記事もありましたが、「確認もせず鵜呑みにする姿勢に問題がある」と批判をたしなめる声が上がりました。
 1月の徳目は「和顔愛語(わげんあいご)」「柔らかい顔で、優しい言葉を」です。こんな世の中だからこそ、悪意のない嘘や冗談は笑い飛ばす心の余裕が必要なのかもしれません。常に柔らかい顔で優しい言葉は難しいかもしれませんが、コロナにより疲弊し窮屈になった今こそ笑いに寛容になる姿勢は忘れずにいたいものです。
 今年のM-1について書きたかったのですが、今話題になっている優勝した毒舌漫才を上手に昇華させる自信が無く、虚構新聞にしてみました。足らぬ足らぬは文才が足らぬ…皆様も笑いのある年末年始をお過ごしください。(2023.1)

手間を楽しむ

2022/12/02
 とある学校だよりに非常に興味深い記事があったので、簡単にご紹介します。【大変優れた動物学者が、動物の好み、栄養、噛む力、歯の形等の条件を揃え、簡単に食べられる餌を開発し動物に与えたところ、病気が減り、繁殖力も高まったそうです。ところが数年後、霊長類のゴリラやオラウータンが突然暴れたり常に動き回ったりする行動が増えていきました。原因は餌である可能性が高まったため、これまで通り自然のものを与えたところ、その問題は解決しました。】このように書くと、開発した餌の成分が原因なのではと考えるかもしれません。しかし実は、自分で皮をむいてから食べる、ほじくって食べるといったような、動物自らが一手間かける機会を無くし、簡単に食べられる状況にしたことが原因だったそうです。そして、この簡単に欲求が叶うことによる弊害は、同じ霊長類の人間にも起こるそうです。これまでお伝えしていた「何でも簡単に要求が叶う状況は子どもたちに悪影響を与える」という内容とリンクすることだったため、ハッとさせられました。
 12月の徳目は「忍辱持久(にんにくじきゅう)」、「根気強く取り組もう」です。「根気強く」と書くと「苦手なものに向き合う」というイメージがつきますが、前回もお伝えした通り、子どもたちの特徴を踏まえた対応次第で、好きなもの、興味のあるものは増やせます。何でも簡単に要求が叶う環境を作らず、ちょっとした手間を自ら進んで楽しめるような習慣を身につけさせたいものであり、私たち大人がその対応の手間を惜しんではいけないと改めて考えさせられます。
 他のお便りから話題を引用、前回と似たようなまとめ方、楽をして園だよりを作るという「簡単に要求を叶えよう」としているのは私かもしれません…。(2022.12)

やり遂げる力

2022/11/06
 普段行くスーパーにレジのスペシャリストがいます。私は「レジの魔術師」と呼んでいるのですが、購入品をマイ買い物かごへ入れる順番を瞬時に判断し、無駄がなく素早い動きで的確に入れていきます。その姿は本当にずっと見ていられるほどで、レジ打ち選手権があれば全国でも上位になれるのではと思うほど惚れ惚れします。かといって、ロボット的かといえばそうではなく、お客さんへの対応は非常に柔らかくもあります。そのため、その方を見つけたら、例え他の列より混んでいても必ず並びます。会計が終わると見ているだけのこちらが、ちょっとした達成感のような満足感を得ることができ、すごく幸せな気持ちで買い物を終えることが出来ます。きっと、レジの仕事が大好き、もしくはお客さんへの想いをとことん突き詰めた結果の姿なのではないかと考えます。そして、その極めた姿は人に感動すら与えます。
 11月の徳目は「精進努力(しょうじんどりょく)」、「最後までやり遂げよう」です。人に言われてする努力はやはりどこかでくじけてしまいます。好きだから、極めたいからという思いが最後までやり遂げる力を生み出すのだと思います。そのためには、とっかかりで楽しいな、面白いなと思わせ、その思いを継続させる工夫を私たち大人がしていかなくてはなりません。好き嫌いがあって当然と決めてしまいがちですが、子どもには無限の可能性が秘めているとも言われているように、その子その子の特徴に応じた向き合い方で、興味を増やし高める方法はあります。十人十色とはこちら側の対応方法のことであることを肝に銘じ、これからも試行錯誤していきたいと思います。
 今、取り組んでいる視点をもっと早く知っていれば…我が子の子育てで痛感する日々です…。(2022.11)

背中を押す方法

2022/10/03
 先日、とあるニュース番組でナッジという理論の特集をしていました。ナッジとは「ひじでつつく」という意味だそうで、ちょっとしたきっかけで無意識に良い行動を促すことだそうです。その特集では、Google社がビュッフェ形式の社食で取皿のサイズをそれまでのものより2.5cm小さくしたところ、廃棄量が最大で70%も減ったという事例から、渋谷のセンター街にある喫煙所の吸い殻入れを2択の投票箱式に変えることで、ポイ捨てが1週間で10分の1に減少したという事例などが紹介されていました。習慣が身についている大人でさえ環境の変化だけで行動が変わる事例を受け、明照の取り組みに通じるものを感じました。小さい頃の環境設定の重要性とそれをきっかけとした継続の大切さを改めて考える内容でした。
 10月の徳目は「同時協力(どうじきょうりょく)」、「お互いに助け合おう」ということです。「協力」の素晴らしさは実体験を通してはじめて気づき定着していくものです。そして、言葉で表すことは難しいものです。これまで、保育目標の「仲良く」を子どもたちに「お友達が間違ったことをしていたら、優しく『違うよ』と教えてあげること」と伝えていましたが、少し後ろ向きで難しく、なんとなくしっくりきていませんでした。しかし、先日受けた研修で「『ありがとう』と言ってもらえる行動かどうか」という話を聞き、これまでより前向きでしっくりくる感覚がありました。これからは「お友達から『ありがとう』と言ってもらったり自分から伝えたりすること」と話していきながら、更に子どもたちの望ましい行動がどんどん増えてくるような環境を設定し、その行動が習慣化できるような保育を模索していきたいと思います。
 ドラマやバラエティーばかりではなく、ニュースも見ていることを知って頂けたら幸いです。(2022.10)

失敗経験による成功体験

2022/09/05
 剣道には「打って反省、打たれて感謝」という言葉があります。「試合で勝っても満足せず精進し、負けたら自分の弱点を教えてもらえたと有り難く感じなさい」という意味です。上手くいったとき以上に、上手くいかなかったときこそ成長する機会であり感謝を忘れてはいけないと、この言葉は教えてくれます。
 9月の徳目は「報恩感謝(ほうおんかんしゃ)」「あらゆることを有り難く感じよう」です。現在園では「成功体験」を意識した保育に取り組んでいますが、それはいつまでもお膳立てしてあげることではありません。最終的には周囲に左右されず、自分の力で成し遂げることが出来る姿を目指しています。始めは意欲を持たせるために、絶対に成功できるものを成功できる環境で提示し、大げさなくらい褒めますが、意欲が出てきたら環境を変えて取り組ませたり、少し難しくしたりと、少しずつ周囲の影響を受けず、そして進んで取り組む姿勢を育んでいきます。その過程において、子どもが失敗をしてしまうこともあります。しかし、その失敗を通し、切り替えてより良い方法を模索することが最善であることを体験出来るような環境も併せて整えます。失敗による新たな気づきは、周りに左右されず自ら行動する力に繋がります。つまり、適切な失敗経験による気づきそのものが、より重要な成功体験となるのです。このさじ加減が難しい部分でもありますが、どの場面でどれほどの失敗が必要か、という視点も持ち合わせながらこれからも保育を進めていきたいと思います。
 今回のテーマにぴったりなドラマが現在放送されているのですが、いつもテレビばっかり見ていると思われたくなかったので、剣道の話題にしてみました。そんな、ちっぽけなプライドが一番成長しない要因ですね…(2022.9)

楽しさをいかに伝えるか

2022/08/02
 25年間世界陸上のメインキャスターを務めていた俳優の織田裕二さんが、今回をもって卒業されるそうです。皆さんはご覧になったでしょうか。「世界陸上=織田裕二さん」とイメージできるくらい印象的ですが、正直にお話しすると、これまで日本人選手の競技の様子だけを見る程度で、そこまで織田さんのコメントをしっかりと聞いたことはありませんでした。しかし、今回織田さんのコメントを聞くことで、普段見ない競技に興味を持ったり日本人以外の選手にも感情移入したりと、これまでの世界陸上より楽しめ、なんでもっと早く気づかなかったのかと、ちょっと損をした気持ちになりました。実は織田さん、キャスター就任当初はそこまで陸上に詳しくなかったそうです。しかし、そこから色々勉強して楽しさを知り、どんどん人を魅了するコメントが増えていきました。伝える側がどれだけ楽しさを知っているか、そしてその楽しさをいかに伝えるかが大事なのだと感じた世界陸上でした。
 8月の徳目は「自利利他(じりりた)」「自分を高め人に尽くそう」です。子育てにも上記のことは重要なのではと思います。何か取り組みをする時に「当たり前のことだから」「しなければいけないことだから」と思って取り組ませるのか「楽しいよね」「面白いよね」と思って取り組ませるのかでは、やはり子どもたちの興味の持ち方や取り組み姿勢も変わってきます。自分の得意ではないこと、興味がないこと、当たり前だと思っていることこそ、楽しさ、面白さを見つける努力が大人側に求められることであり、それも「自利利他」の一つではないかと感じます。
 今回の原稿は「私史上“最速”」で書き上げることができました。織田裕二さんのお陰です。地球に生まれて良かった~。(2022.8)

言葉で賢くなるな 行動で賢くあれ

2022/07/04
 「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」という漫画に家族でハマっています。凄腕スパイである主人公が、任務達成のために即席で作った家族。実は、妻が殺し屋で子どもは他人の心を読むエスパーの女の子。それぞれの利害が一致したため自身の正体を互いに隠しつつ家族として生活するというホームコメディです。非常に人気のようで、先日までアニメで第1クールが放送されており、録画したものを次の日の夜に家族で見るのが楽しみとなっていました。
 3人は家族を続けるために、円満な家庭を演じるのですが、その中で徐々に絆を深め、困難を乗り越えるたびに本当の家族のようになっていきます。現実的にはあり得ない設定でも、登場人物の心情が丁寧に描かれているため、共感が得られるのではと思います。
 さて、7月の徳目は「布施奉仕(ふせほうし)」「誰にでも親切にしよう」です。漫画と現実はもちろん違いますが、心を育てるためには第1に行動を起こすことが大切で、人に進んで親切するようになるためには、親切をしたことによる喜びの経験をまずはたくさん積む必要があると感じます。私たち人間は、言葉を話せるが故にどうしても理屈で伝え、気づかせようとしがちです。しかし、特にまだまだ経験の少ない子どもたちにとって、「言葉」は意味として理解できても実感として湧きづらく、行動に繋がりづらいものです。「習うより慣れよ」という言葉もある通り、やはりまずは行動する、そしてその行動をして良かったと思える環境を整えることが大切なのではと感じます。心が育つ行動が増えるためには、どんな環境を設定すれば良いのか、日々試行錯誤し取り組んでいます。
 今回の題名は外国のことわざです。行事でのお話や文章で「言葉」をあれこれ遣う私の悪い癖のため、むしろ分かりづらくなることもしばしば…。言葉ですら賢くなれません。(2022.7)

天上天下唯我独尊

2022/06/01
 先日「はなまつり」というお釈迦様の生誕をお祝いする仏教行事を行いました。お釈迦様は、お生まれになられた時「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」とおっしゃったと言われています。この言葉を「自分が一番偉い」といった意味として捉えている方もいらっしゃるかもしれませんが、本当は「私たちそれぞれは、この世界中にどこを探しても他に代わりのいない尊い存在である」という意味が込められています。一人では生きていけない私たちは、他者を敬い大切にするからこそ自分自身も尊い存在となれるのだと思います。
 さて、6月の徳目は「生命尊重(せいめいそんちょう)」「命を大切にしよう」です。他者を思いやる心を育てるにあたり、「友達を大切にしなさい」と言葉で伝えても、まだまだ経験が浅く、生まれてしばらくは自分のことが優先的な生活だった子どもたちにとって、他人を優先することや周囲を考え行動するがピンとこないものです。「叱らない=望ましくない行動を認めている」と思われがちです。しかし、「人や物を叩いたり、物を投げたり泣いたりしても要求は叶わない」という経験ができる環境を設定し毅然とした態度で臨むよう努めています。叱ってしまうと叱る人の前ではやらなくなるかもしれませんが、見ていないところでその行動が出てしまうこともあります。「叱られるからやらない」は心を育てることに繋がっていかないと私たちは考えます。駄々をこねても要求は叶わない事や仲間と仲良く過ごすことによる嬉しい経験を重ねていくことで、周りに目を向けることが出来るようになるのだと思います。手間で即効性はありませんが、小さな積み重ねが揺るぎない土台になると信じています。
 と、書きながら自身の過去の子育てを反省する日々です…。(2022.6)

小さながまんの積み重ね

2022/05/02
 先日、久々にりんごさん、めろんさん、ぶどうさんの子どもたちとお寺の本堂で朝のおつとめをしました。朝のおつとめといっても感染対策のため歌は歌わず、私が鐘を打つだけの内容です。1度鳴らすと30秒近く鳴り続けている鐘を3度打ち、その間は正座をして目を閉じ、手を合わせるという取り組みを前園長の時代からしています。月に1度の取り組みでも子どもたちは3回目あたりから、その2分ほどの時間を正座して静かに過ごせるようになり、めろんさん、りんごさんになるとほぼ全員が手を合わせ、目を閉じられるようになります。職員と子どもたちと一緒になって目を閉じ手を合わせるのですが、その間「こうするんだよ」といった言葉がけもほとんどありません。やってみせる、一緒に取り組むことで子どもが自ら欲求をコントロールし取り組む姿勢を育む一助となっているのではと感じます。
 さて、5月の徳目は「持戒和合(じかいわごう)」「決まりを守り、集団生活を楽しもう」です。目標達成のために自分の欲求をコントロールする力を「実行機能」と言い、幼児期において劇的に発達します。この力は、将来の自己実現や健康維持、犯罪率の抑止にまで影響を与えるとされています。良い意味で大人が管理的に関わりながら、子どもが自発的にルールやマナーを守るよう導くことが大切であり、「小さながまん」の積み重ねがその実行機能を育てるカギです。ちょっとしたルールをいかに子どもたちが自ら進んで守れるようになるのか、これからも試行錯誤していきたいと思います。
 ちょっとした欲求に負け、その積み重ねでわがままボディをシェイプアップできないでいる私。子どもの頃からの小さながまんの取り組みが大事だなと痛感します(汗)(2022.5)

目は耳ほどにモノを聞く

2022/04/05
  最近はオンラインでの会議が増え、画面越しの人と話をする機会が多くなってきました。ある会議での出来事です。相手の顔が映らず、音声のみの状態になるというトラブルがありました。すると、それまで特に気にせず話の内容が聞き取れていたのですが、急に頭に入りづらくなってしまいました。しばらくすると画像が復旧し、またこれまで通り、相手の話を理解しやすくなりました。見ることが聞くことをサポートしていると実感する機会でした。
  さて、4月の徳目(より良く生きるための基本となるもの)は「合掌(がつしよう)聞法(もんぽう)」「敬う心をもって人の話を聞こう」という意味です。話をしっかり聞く第一歩は、話す人をしっかり見ることだと思います。そんな習慣を身につける機会になればと、毎月の誕生会で私が子どもたちの前で話をする際、はじめは口パクで「おはようございます」と挨拶するようにしています。すると、私をきちんと見ていた子どもたちは元気に「おはようございます」と返してくれるので、「お話する人をしっかり見てて偉いね」と伝えます。月1回ではありますがそんなやりとりを何度か繰り返していると、私が話をするときにほとんどの子が注目するようになりました。その取り組みの効果か、それまでより話の内容を記憶している子が増えてきたようにも思います。些細なことではありますが、関わり方を少し変えるだけでこんなにも変化する子どもたちの成長が嬉しくなり、これからも続けていきたいと感じました。
  子どもたちの成長に負けないよう、私たち職員も日々研鑽を積んでいきたいと思います。今年度も宜しくお願いいたします。(2022.4)

希望と欲望

2022/03/02
  3人の子どもがそりすべりをしようとしています。みなさんなら子どもたちに何台そりを渡しますか?考え方は色々ありますが、以下の理由の元、明照で目指しているのは、2台だけ渡して「3人で工夫して仲良く遊んでね」と伝え、3人ともそりすべりの時間を楽しめる子どもたちの姿です。
  3月の徳目は「智慧希望(ちえきぼう)」「希望をもち、楽しく暮らそう」という意味です。希望をもち続けるためには小さな幸せを幸せと感じられる感性が必要です。しかし、常に欲求が叶っている状態では「自分に都合良く」という欲望を増大させます。そして自分本位にならないと不満が募ります。そんな状態では、小さな幸せを幸せと感じることは出来ません。だからこそ普段は慎ましく、落ち着いて過ごすことが大切なのだと思います。子育てに当てはめて考えると、例えば子どもが騒がないようにと好きなことをさせたり、嫌いな食べ物は食べないからと好きな物中心に食べさせたりするのは、無条件で、または望ましくない行動にご褒美をあげていることと同じであり、どんどん幸せを感じる感性を麻痺させていくことに繋がるということです。更には頑張る心や周りのことを考えようとする思いも育たなくなってしまいます。
  今年1年、入園式でお話しした通り「切り替え」をテーマに基本的生活習慣の土台を作り、その上で「明るく、正しく、仲良く」を目指してきました。「切り替え」とは「自分のやりたいこと」と「やるべきこと」の優先順位を場面に応じて決めて行動することであり、自分の欲望を抑え落ち着いて行動することに繋がります。私たち保育者がまだまだ勉強不足の部分はありますが、その中でも子どもたちの目を見張る成長に手応えを感じております。進学や進級による新たな環境でも、身についた望ましい習慣はそのままに、更に成長できることを期待しています。(2022.3)

心を整える

2022/02/01
 チカというお魚を頂く機会がありました。よく洗った後にしっかり水気を取って源タレにつけてから唐揚げにすると美味しいというアドバイスをもらい、チャレンジしてみました。洗った後に小分けにし、それぞれキッチンペーパーで水気を拭き取るという作業を10分ほど繰り返したのですが、同じ作業を繰り返すことで無心になり、とても気持ちがスッキリした感覚になりました。できあがった唐揚げも非常に美味しく、何だかとてもホッコリする夕食タイムとなりました。
  さて、2月の徳目は「禅定静寂(ぜんじょうせいじゃく)」、「よく考え、落ち着いた暮らしをしよう」です。「禅定」とは「心を整える」のような意味合いが強く、「よく考え」とはあれこれ思いを巡らすというよりも、落ち着いて冷静になるということです。そして、常に心を整える努力をすることが心を育てることに繋がると考えます。仏教的には座禅や瞑想が思い浮かぶかもしれませんが、そのような特別な取り組みだけでなく、読書や家事、掃除を丁寧に行うといった日常生活の活動も「禅定」に繋げることができます。禅定により自身の感情の変化に気づきやすくなると、思考や感情の連鎖を断ち切り、心を安定させやすくすることができます。つまり、心を育てるためには心や思考といった目に見えないものに焦点を当てるのではなく、まずは体を一定に動かしたり、状態を保つことが必要だということです。有名なサッカー選手が「心を整える」という本を出版し話題となりましたが、そのサブタイトルに「習慣」とついている点からも、心にアプローチするためには言動を見直し修正していく重要性が見て取れると思います。
  とっても美味しく、そして心も整う「チカの唐揚げ」皆さんも是非お試し下さい!(2022.2)

声の力

2022/01/07
  「叱りゼロ」私自身ができているかと言えばそんなことはありません。自宅だと「少し」声を大きく出してしまうこともあります。教員時代も1日中笑顔でいられた日はそこまで多くなかったような気がします。しかし、叱ることによる弊害も感じていました。叱ることは即効性はありますが、効果は長続きしません。そして、続けると子どもも大人もそれになれてしまい、更に声を大きく出したり強く言ったりしなくてはならなくなります。そのエスカレートした先には感情的な言葉や場合によっては「手」が出ることがあるのだと思います。また、「叱られないように」という言葉がある通り「叱る」の効果は後ろ向きであり、子どもたちの自主的な取り組みに直結しないことが多々あり、叱られない環境になるとその行動がまた出てきてしまうおそれもあります。興奮した状態の時に叱ると興奮を増大させることもあります。だからこそ、「褒める」を意識する必要があると感じます。
  しかし、それはどんなことでも褒めるということではありません。「望ましい行動を褒め、望ましくない行動には毅然とした態度で臨む」というメリハリです。褒めるや叱るを含めた声かけは、タイミング次第で望ましい行動も望ましくない行動も増やします。しかし、望ましくない行動と望ましい行動は同時に起こることはありません。つまり、適切なタイミングで声かけをして望ましい行動を増やすことにより、必然的に望ましくない行動を減らすことにつながっていきます。
  1月の徳目は「和顔愛語(わげんあいご)」、「柔らかい顔で、優しい言葉を」です。「叱らないように」と思うほど顔が引きつってしまいます。どのような環境設定をすれば適切に褒める場面を作れるか、という視点で考えてみるのも1つなのかもしれません。
  …まあ、そこが一番難しいんですよね。いつも私も四苦八苦しています。もし、私の顔が引きつっていることがあったら「園長!顔!」と是非ご指摘ください(汗)(2022.1)

根比べ

2021/12/03
  「二月の勝者」という中学受験をテーマにしたドラマを毎週家族で見ています。スーパー塾講師黒木蔵人が成績不振の塾を建て直しにやってくる内容です。黒木の言動は、一見冷たいように感じますが、それは偏見や世間体を気にする大人の立場がそう感じさせるだけであり、誰よりも子どもの現状と今後の可能性を踏まえた対応であることに気づかされます。例えば過去問を解かせるシーン。下位クラスの子達には前半までの基本問題だけを解かせました。「過小評価に繋がり子どもたちを傷つけるだけ」という大人の心配をよそに、相対的に丸が多く付いたテスト用紙に子どもたちは自信をもち、もっと頑張りたいと思えるようになりました。また、頑張って上位クラスに選抜された努力家で内向的な柴田まるみと、天才肌でずっと上位クラスにいる活発な直江樹里を関わらせたシーン。まるみが上位クラスのレベルの高さに自信を無くし,母親は子どもの性格のことも考え無理をさせないよう塾に訴えます。しかし、実はまるみは樹里の活発な部分に、樹里はまるみの努力家な部分に憧れており、お互いに高め合う存在となりました。私たち大人は、「周りから見て」とか「この子はこういう性格だから」と、ある意味枠にはめて考えがちですが、それを取り払った時に子どもたちはとてつもなく成長することを目の当たりにします。しかし、そのためには私たち大人自身が世間の目やこれまでの常識に打ち勝つ覚悟も合わせて必要なのだと感じます。
  12月の徳目は「忍辱持久(にんにくじきゅう)」、「根気強く取り組もう」です。「受験」はなぜか「詰め込み」を連想し少し構えてしまいます。しかしそれは私たち大人の偏見または頑張らせ方の問題であり、ここで大切なのは「何事にもいかに意欲的に取り組むか」ということです。それは子どもの「育ち」にも繋がることなのではないでしょうか。ダメなものを叱ることは簡単ですが、それはまさに私たちが毛嫌いする「勉強しなさい」と叱り「詰め込み」する「受験」と変わりません。かといって、「自由にさせています」と子どもに任せることも、良いことと悪いことを分別させ、子どもたちの可能性を引き出すといった本来大人が担うべきものを放棄し、子どもの性格に原因を求めていることになってしまいます。大人は子どもが頑張りたくなる環境を作り促し、叱らず許さずを徹底する。子どもの根気強さは大人が根気強く取り組むことで引き出せるのだと思います。
  「目標の 高校目指し 一直線 心に決めて 今日は眠ろう」中学生の時に作った短歌です。短歌と同じ生活をしていたらとんでもない目に遭いました。何事にも意欲的に取り組む習慣は早めにつけたいものです…(2021.12)

1人遊びのススメ

2021/11/02
 昔、私が遊んだ「ドラゴンクエスト3」を息子達が初めからやり直しており、佳境に入りました。始めの頃は「どうすればいいの?」「代わりに進めて」だったのが、最近では自ら考えてストーリーを進めて行く姿に、現在園で取り組んでいる「1人遊び」を重ね合わせていました。
  1人遊びは集中力を高め、自分で考える力が育つと言われていますが、実は他者との適切な関わりにも非常に重要な役割を担います。1人遊びが出来ないと、1人で遊ぶのがつまらないために周囲へちょっかいを出し、周囲の反応を楽しむといった間違ったコミュニケーションの取り方を学んでしまいます。これが対人トラブルの原因の一つです。ご家庭でも、兄弟げんかやお家の方がずっと関わらなくてはならなくなることで家事が滞ってしまうおそれもあります。また他者への依存が増すと、食事や身支度などの基本的生活習慣の確立にも悪影響を与えます。園では、1人遊びを苦手としている子にはまず個別のスペースを設け、保育者とおもちゃで遊ぶことで遊び方を教えます。少しずつ1人で遊べるようになったら、おもちゃを介して他者との適切な関わりへ繋げていきます。そうすることでおもちゃの貸し借りや協力してのブロック作り、ごっこ遊びなど、おもちゃを通して子どもたちは「仲良く」過ごす方法を身につけていきます。1人遊びは他者との関わりの土台であると言えるのではないでしょうか。
  さて、11月の徳目は「精進努力(しょうじんどりょく)」、「最後までやり遂げよう」です。先述した通り、1人遊びは集中力、やり遂げようとする力を育み、「自立」にも繋がります。いつも園児と一緒に保育者も遊んで関わることが一般的な保育園の風景として捉えられていますが、明照では保育者の介入を少しずつ減らし、最後には子どもたちだけの力で仲良く遊べるという自立した姿を目指し取り組んでいます。
  上記のドラクエエピソードはテレビゲームを推奨するものではありませんが、決められた時間で切り上げて次の活動に移る切り替えに繋がっています…と、自分も懐かしさで見て楽しんでる部分もまあまああります。(笑)(2021.11)

対応しないという対応

2021/09/30
 先日「はじめてのおつかい」が放送されていました。同じ年頃の子と関わる身としてはやはり気になる番組なのでこれまでも見ていました。その中で、自信のない子や駄々をこねる子がお使いに行く行かないを左右するポイントがあることに気づきました。それは、子どもとの距離と声かけです。上手くいかないときは大体頑張らせようと、親が近寄ったり声をかけたり、子どもの抱っこやタッチの要求に応えたりしている時です。すると子どもは踏ん切りが付かなくなっていることがほとんどでした。一方で、大人が子どもの視界に入らずあえて声をかけない時こそ、気持ちが切り替わり凜々しい目つきになっていきました。そんな様子を見てふと、園での鼓隊練習が頭をよぎりました。練習中、次の動きに自信の無い子はどうしても保育者に視線を向け、これで合っているかを確かめようとします。保育者も自信を持たせようと目を見てうなずくと、その時は出来ますが次の練習でも同じように子どもが視線を向けます。その時にあえて視線を合わせず、例え多少時間がかかっても子ども自身の判断で行動できたときに褒めると、次から子どもは自信を持って動き出すことが出来ます。環境設定により気持ちを切り替えたり自信を持てたりするのだなと改めて感じる機会でした。
  10月の徳目は「同時協力(どうじきょうりょく)」、「お互いに助け合おう」ということです。「敢えて対応しない」という対応は、ご家庭との連携がなくてはできないものです。人間誰しも、出来れば苦しくない方にいきがちであり、子どもならなおさらです。その時に、「対応しないという対応」を周囲が理解していないと、一見冷たく見えるためやりきれず「切り替え力」を身につける機会を奪ってしまいかねません。ご家庭と協力して、子どもたちの更なる成長を後押ししていきたいと思います。
  ひとまず運動会。終わるまで辛抱して、終わったらお子さんをいっぱい抱きしめてください。(2021.10)

区別と個別

2021/09/02
  「(東京五輪開催への)賛否両論があることは理解しています。ですが、われわれアスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば本当に光栄に思います。」男子柔道73キロ級金メダリスト大野将平選手が決勝戦後のインタビューで話した言葉です。正直私は、今年開催に疑問を抱いていた一人ではありましたが、少なくとも選手達のひたむきさに、連日報道される暗いニュースから解放された気持ちになり、また頑張ろうと思いを新たにすることができました。また、今回からの新種目であるスケートボードにおいて、10代20代の選手達が国やライバル関係なく難しい技が決まったときは喜び合ったり、失敗した選手を励ましたりする、これまで以上に一体感のある姿に、嬉しい気持ちにもなりました。現在も、開催そのものを手放しで歓迎する心境にはなりませんが、その中でも、素晴らしいものを見せてもらえた選手の方々への感謝の気持ちが芽生えているのもまた事実です。
  9月の徳目は「報恩感謝(ほうおんかんしゃ)」「あらゆることをありがたく感じよう」ということです。感謝するためにはまずそのものを認める姿勢が第一歩です。そういう点において、スケートボードで見た光景はこれからとても大事になってくる姿だと思います。現在、パラリンピックが始まっていますが、水泳競技に出場経験のある一ノ瀬メイ選手は「パラリンピックがなくなり、五輪のいちカテゴリーとしてパラ競技が行われるようになればいい。」とコメントしています。「障がい者のスポーツ」ではなく「スポーツの一つ」という認識が重要なのです。それと同じように、園でもこれまでの常識や偏見を取り払い、「みんな自分に合った方法で支えられながら成長している子どもたち」という理解が、入園式にお話しした「インクルーシブ教育」に繋がっていくのだと感じています。
  まずは、人の金メダルをかじらないよう伝えていきたいです。(2021.9)

自利と利己

2021/08/03
  「のびのび…振る舞いなどに束縛がなく、ゆったりと落ち着きのある様子」様々な国語辞典を調べると大体このようなことが書かれています。では「自分勝手」とは何が違うのでしょうか。私はルール遵守や周りへの配慮があるかどうかなのではないかと思います。スポーツにおいて「のびのびプレーする」とはルールを無視することでないですし、普段の生活で「のびのび過ごす」も自分のしたいことを優先させるために周りに迷惑をかけることでもありません。「のびのび」にはルールと配慮があることを私たちは考えなくてはなりません。
  8月の徳目は「自利利他(じりりた)」「自分を高め人に尽くそう」です。「自利」には「自分の得たモノを周りのために生かす」という意味が込められており「自分のためだけ」の意味を持つ「利己」とはまるで違います。仏教において、自分を高めようと努力する「欲求」と、何でも手に入れたいと行動する「欲望」は別物と捉えます。「欲望」は際限がなく、得られないと心が落ち着かなくなり不安や怒りなどの「執着」へと形を変えます。この「欲望」「執着」を無くしていくことが大切です。子どもに置き換えて考えると「わがまま」や「かんしゃく」などが無くしていくべきものと捉えます。ものごころがつく2歳前後から、要求を叶えようとわがままやかんしゃくという行動を減らし、気持ちを切り替えられるようになることが子どもにとって自利への第一歩だと考えます。今の世の中、いつでもどこでも自分のしたいことや欲しいものが比較的容易にできたり手に入ったりします。また、乳児教育の雑誌には「子どものしたいようにさせましょう」と耳障りのよい言葉が並んでいます。欲望を叶えることが当たり前になってしまえば、当然叶わないときの「執着」はとても大きなものになり、自分でもコントロールできない「かんしゃく」となります。だからこそ、要求が叶わない機会を設け、その時には気持ちを切り替えることを、私たち大人が『叱らず許さず』で教えていかなくてはならないのではないでしょうか。「のびのび」と過ごす方針はこれまでと変わらずとも、時代という環境がこれまでと変わりつつある今、取り組み方も変えていかなくてはならないなとひしひしと感じている今日この頃です。
  いつもよりかなり行数が多いところから、私のある意味執着が見え隠れしますが、ご家庭でも是非考えて頂けたら幸いです。 (2021.8)

先を踏まえて

2021/07/02
 今、読んでいる本にこんな事例がありました。会社で「もうだめだ」と弱音を吐き仕事に手が付かなくなるAさん。一般的には「甘え」や「精神の弱さ」というAさん自身の問題として捉えがちですが、応用行動分析学ではAさんの行動後にどんなことが起こったかに着目し、その環境の中に問題点を探します。この会社ではAさんの弱音が出ると職場の人たちの慰めや励ましがあるといった状況が見られました。自分の行動直後に起こったことが、本人にとって嬉しいことであればその行動は増え、そうでなければその行動が減るという人間の心理を踏まえ考えると、今回の事例では社員の慰めや励ましがAさんの弱音を吐く行動を増やしている原因と捉えます。では、どのようにすれば良いのでしょうか。この本には正解が書いてありませんでしたが、弱音を吐いているときは対応せず、仕事に取りかかった瞬間に励ましの声をかけてあげる対策が考えられるのではと思います。声をかけるタイミングを考えさせられる事例です。
  7月の徳目は「布施奉仕(ふせほうし)」「誰にでも親切にしよう」ということです。子どもが泣いていると、泣き止ませようと声をかけてしまいがちですが、子どもの年齢やその前後の状況をしっかりと見極めないと、私たちの対応によりその子の泣く行動をただ増やしてしまうことがあります。一方、泣き止んだ瞬間や気持ちを切り替え次の行動に踏み出した瞬間に声をかけることで、その子の良い部分が増えていくことがあります。思いやりとは、目の前のことだけではなく先のことも踏まえて対応することであると肝に銘じたいものです。
  私が望ましい行動をしていたら間髪入れずに「園長先生、素敵です!」と声をかけて頂ければ幸いです。(2021.7)

他からの視点

2021/05/31
  先日のりんごさん、めろんさんとのバス遠足での事。昨年度のバス遠足はことごとく雨に降られ屋内でお弁当を食べたため、子どもたちにとって保育園のお友達と中庭以外の屋外で食べるのは初めてでした。
  芝生の上に敷物を敷いてカバンからお弁当を出していると、当然のことながらアリなどの小さな虫が敷物の上を通過します。虫が好きで観察を始める子、苦手で声を上げてしまう子、お弁当に近づいたとき以外は特に気にしない子など様々な反応が見られました。そんな中、あまりにも怖がる子に対し、特に気にしていない子が「虫さんだって自分たちより大きな人間にびっくりしてるんだよ。」と諭す姿がありました。怖がっていた子はハッとした顔をして、必要以上に怖がることをやめようと頑張っている様子が見られ、健気な子どもたちのやりとりに心がほっこりしました。
  6月の徳目は「生命尊重(せいめいそんちょう)」「命を大切にしよう」です。命を大切にするとは、自分を大事にすることであるのは言うまでもありませんが、それと同じくらい周りも大切にしなくてはなりません。その為には周りの視点からも物事を考えることが重要であると考えます。どうすればみんなが共に生きられるのか、そんな気持ちを忘れずにいたいものです。
  そうは言っても、私自身も虫がそれほど得意ではないので、今年も長澤まさみに負けず虫コ○ーズ的なものをぶら下げて、虫とのソーシャルディスタンスを確保しようと思います。(2021.6)